四畳半神話体系について
「四畳半神話体系」とは
京大出身作家の森見登美彦さんの準代表作といったところ。
主人公は、薔薇色のキャンパスライフに憧れながらも有益なことを何もせず、むしろ悪友・小津の影響もあり無益なことばかりしていたら3回生になってしまった男子学生。そんなアホことをするのは勿論京大生である。
映画サークル「みそぎ」
「弟子求ム」という怪しげなビラ
ソフトボールサークル「ほんわか」
謎の諜報機関「福猫飯店」
入学後すぐに訪れた4つの選択肢とそれぞれを選んだ2年後に思う後悔、「あのときこうしていれば…」という言わば人生最大のテーマを描いた作品かと思う。
「夜は短し歩けよ乙女」と並んで京大生のバイブルと言っていい作品ですね。
黒髪の乙女に憧れ、京都大学に憧れ、人生を狂わせた受験生も多いんじゃないかと思う。
何を隠そう僕もその1人だ。
そして四畳半神話体系の主人公と同じく3回生、同じようにこれまでの怠惰な2年間に大きな後悔、「あのときこうしていれば…」という後ろ向きなフレーズが全身に染み付いた後ろ向きな男の子である。
隠さなくても僕のたるみきった怠惰な心と、臆病で尊大な自尊心がこのブログにねっとりと染みついているような気がするのは気のせいか。
違うんだ、主人公のように僕もまだ自分の才能を発揮できていないんだ、もどかしさでいっぱいなんだ!!
とにかく、「夜は短し」「四畳半」に憧れ京大に入り、2年が経ち四畳半神話体系を読み返してみたら、自分がまさしく主人公の通りになっていたわけなんですね。
思春期に森見作品から影響を恐ろしく受けたと思うのですが、この本の主人公のようになろうと思ったことはないのでこうなってしまったのは自分の素質のせいですね。なんてこった。
でもまあ、久しぶりに読み返したら面白いのなんのって。
地名も大学の雰囲気も主人公のもどかしさも後悔もぜんぶ分かる。
さながらVRのようにこの本の世界を自分が生きて見渡せるんです。
森見作品をこんなふうに乗り回せるようになっただけで京都の大学に来た甲斐があったもんだなぁ。しみじみ。
以下ネタバレ注意
森見さんはこの作品で「あのときこうしていれば…」という問いに一つの答えを出しています。
主人公はどの団体を選んでも小津と出会うし、無益な2年間を送った後悔は残るし、憧れの黒髪の乙女:明石さんと結ばれる。
もちろん細かい出会いや思い出はそれぞれの選択肢で異なるのですが、大筋は変わらない。
そういう変わらないものがあって、それを運命っていうんだ。
人生ってそんなもんです。
運命の赤い糸も黒い糸もしっかり結ばれてるんです。
そう感じました。てかそう書いてある。
高校生のときはよくわからず文体や作品の雰囲気にただただ憧れていたのですが、改めて読み返して大好きな作品になりました。
たくさん選択肢がある中から選ぶことって後悔を生みますよね。
あのときこうしていればって何とでも言えるようになってしまう。
そんなときこの作品を思い出すと面白可笑しくその悩みを吹き飛ばせるというか、うまく咀嚼してのみ込めるようになるんです。
そんなわけで今の自分のとても大切な一冊。
色々と後悔はあるけど結局自分は自分。腐っちゃいけないよ。
四畳半神話体系、よかったら読んでみてください。アニメもあるよ。
受験生は狂わされないように気をつけて!
ではまた!